第5回 軽部京介 Hair California〜新たなビーチスタイルの提唱
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湘南のコーストライン近くにヘアサロン、『ヘアカリフォルニア』を構え、都会的でありながらビーチ、サーフを日々身近に感じるスタイルを提唱する軽部京介氏。カリフォルニアのサーフカルチャーにも精通し、これまでジョエル・チューダーやアレックス・ノストを始めとする多くのアイコンのヘアスタイルを手がけてきた。
自身も長年、シングルフィン・ロングボーディングに傾倒してそのスタイルに磨きをかけ、スタイリッシュなライディングは様々なブランドから声がかかるほど。これまでありそうでなかったサーフスキルも併せ持つカリスマ美容師として、他の追随を許さない存在であることは間違いない。今回はそんな彼が影響を受けたカリフォルニアのサーフスタイルを中心にクローズアップ、また近年ハマっているというスノーサーフとの繋がりについて話しを聞いた。
以前、といっても10年くらい前にJJウェッセルズのログがヘアカリフォルニアの平塚店の天井に飾ってあったのを覚えているんだけど、あのボードはどういう経緯で手に入れたの?
カリフォルニアに遊びに行った時に、なんかボードを買いたいなと思ってサンクレメンテのサーフショップに行ったんですよ。そしたら中古で売っていたので買ってみたんです。その後、JJに会う機会があって、お家にも行かせてもらいました。
それは、カットバック・カリフォルニアの撮影の時?
その、1年ぐらい前だと思うんですけど、向こうで友達と遊んでいたときにJJがいるからチャーチにサーフィン行こうって話になって。で、チャーチで一緒にサーフィンした後、昼飯にブリトーとか買って、彼の家に行ったんです。全然会う予定はなかったんですけど、「実は昨日ボードを買ったんだよね」と話していたら、「じゃあフィンあげるよ、これ使いなよ」ってCAPTAIN FINをもらいました(笑)。
最近ゲットしたBD AQUATIC DIV.のTHE COMMONERもJJのシェイプデザインだけど、当時のデザインとは変わっている?
手に入れたばっかりでまだ2回しか乗れていなくて、良い波で試せていないのでよくわからないんですけど、形は似てますね。これはEPSコアのソフトトップなんで、グライドするクラシックログの乗り味とは違った感じですけど、気軽に使うにはすごくいいと思います。幅広ですけどターンもやりやすく、ウォーキングも安定してノーズライディングも出来ます。サーフィンを始めたばかりの初心者の方とか、子供や奥さんに乗らせても楽しめますよね。
その後はJJのヘアカットする機会もあったの?
はい、CUTBACK TO CALIFORNIA の撮影の時にも会って、ヘアカットしました。
CUTBACK TO CALIFORNIAのツアーの話を聞かせて。どういう経緯で始まって、 何回くらいやったの?
カットバックの原案みたいなものは自分が元々考えていたもので、僕がサーフィンに出会って感銘した映画が『エンドレスサマー』だったんですよ。あの映画は、終わらない夏を求めて旅するじゃないですか。
やっぱあれって、多分見た人全員が憧れると思うんですけど、自分もすごく憧れて影響を受けました。世界中のいろんな場所でサーフィンしてみたいなとか、旅してみたいなと思う中で、自分だったらサーフボードだけじゃなく、ハサミを持って旅をしてみたいなと思ったのがきっかけですね。
一番最初にカリフォルニアに行った時のことを覚える?
はい、初めて行った時は22か23歳だったので、 20年ぐらい前ですね。サーフィンするだけじゃなく、シェイプ工場とかグラッシング工場も行く機会があって、すごい刺激受けましたね。HOBIEの工場とか、ムーンライト・グラッシングに行きました。あとジョエル・チューダーのボードをシェイプしているハンク・バイザックの工場とか。
なんでまたサーフボード・ファクトリーに?
美容学校を卒業して、美容師になる前に、藤沢のサーフショップで1年くらい働いていたんですよ。美容室に就職しちゃうと、サーフィンどころじゃないよ、みたいな話を聞いていて、それならサーフィンに1度没頭したいなと思って。ショップの繋がりで現地のHOBIEの工場に行ったら、ヘッドシェイパーだった故テリー・マーチンとかがいました。その時に高校生だったタイラー・ウォーレンにも会ったんです。
お店のロゴなども彼が手がけたんだよね?
はい、タイラーはサーフィンはもちろん上手なんですけど、絵の才能とか、すごいじゃないですか。絵の感じも、グラフィックも好きだったんで、お店の看板とかをお願いしました。
で、これはまた別の機会ですけど、タイラーのお家に遊びに行かせてもらったんです。彼がちょうど家を買ったときだったんですけど、自宅にシェイプルーム、ガレージ、アトリエが全部同じ敷地にあって、なんか彼のやりたいことが、全部そこで成り立つというを目の当たりにして影響を受けました。
今の自宅とサロンを一緒にしたのは、そこだったりします。そうするとサーフィンする時以外は、家でやりたいことは完結するじゃないですか。
ヘアカリフォルニアは今年で何年?
2011年にスタートしたので、12年ですね。
今の店舗、Fujisawa HAIR CALIFORNIA -studio- は鵠沼海岸の近くだけど、この場所では何年目?
この場所は2年です。最初は平塚で始めて、その後オアフ島に2年ぐらいいて、その次は藤沢のエイトホテルで5年です。
いわゆる湘南、今のロケーションはどう?
やっぱり、いいですね。自宅のサロンで働いているので、やっぱり時間が作りやすい。そして自分が好きなことをする時間も増えました。仕事をする前にサーフィンに行ったり、ちょっとした時間の合間にもビーチに行くことができるんで。
湘南は街と海が融合してる場所で、面白い人だったり、すごい活躍している人だったりいろんな方がいるんで、面白いです。新たなチャンスとかにも恵まれている気がします。湘南はちょっとカリフォルニアっぽいなって思いますし、人の雰囲気もカリフォルニアに似ている気がしますね。
カリフォルニアに注目するきっかけは?
一番最初に憧れたのはジョエル・チューダーです。『LONGER』のビデオを見て、それがちょうど僕がロングボード始めた時だったんです。それで、なんかめちゃくちゃかっこいいって思いました。
お店の名前、ヘアカリフォルニアの由来は?
自分はカリフォルニアのサーフカルチャーとか、雰囲気とかに憧れていたので、お店を持ったら、カリフォルニアを感じられる場所でヘアカットをしたいなと思っていたんです。カリフォルニアってこう、緩くてなんか陽気な感じでかっこいいじゃないですか。カリフォルニアのサーファーの雰囲気とか、 そういうスタイルを日本で提供できたらいいなっていう思いからですね。
提供するヘアスタイルもカリフォルニアのサーファーとかに影響を受けることがある?
はい、あります。ただカリフォルニアの雰囲気の髪型を、そのまんま日本でやってしまうと、ちょっとやっぱりこう、社会的に合わなかったりするので、同じことをそのまんまやっているわけではないんです。髪の毛に対しての軽さとか重さとか、微妙な長さのバランスとか。あと、ブリーチとかを使ってメッシュとかするにしても、ちょっと潮焼けっぽいような染まり方を狙ってやったりとか。パーマを巻く時も、わざと違う大きさのものとかを巻いて、天然パーマのような自然な感じを再現するようにしています。
最近は冬になるともっぱら雪山に通っているようだけど、スノーサーフを本格的にやりだしてどれくらい?
本格的にスノーサーフを始めてから3シーズンを終えたんですけど、そもそもやり始めたきっかけが、パンデミックが始まってから、サーファーが海にやたらと増えた気がしたんです。混んでいる海でサーフィンすることに、なんかフラストレーションを感じました。自由に滑走できないっていうか、波に乗ってるっていうよりかは、ひたすら人を避けているような。
それで、スノーボードをちょっとやってみようかなって思って、やってみたらすごくハマりました。2年目からは、 冬はほぼ毎週。仕事を終えて夜ゲレンデに向かい、車中泊して朝から滑って、もう一泊して夜に帰ってくるような。
スノーサーフの魅力は?
とりあえず、冬はゲレンデに行けば、絶対に雪はあるじゃないですか。その辺もすごい魅力だと思うんですね。波だと、やっぱりあったりなかったりがある。その点スノーは、冬だったら行けば必ず滑れるっていうのと、滑っていられる時間と距離が長い。
最近はゲレンデに3Dバンクを作ってある所もあるじゃないですか。スノーボードしているっていうよりかは、雪の上でサーフィンしているような感覚です。
カービングが魅力なのかな。
自分はパウダーと、ウェイブのバンクが好きです。バンクだと、ミットレングスに乗ってサーフィンしているようなイメージですね。地形が保たれているんで、サーフィンで言うダンパーとかないじゃないですか。リンコンやマリブでサーフィンしているような、ショルダーとフェイスが一定のホレ方をして、カリフォルニアのいい波に乗っているような気分になります。あとウェイブのバンクの楽しいところは、ボトムターンして、トップターンするみたいに反復練習できたりするのも面白いところだと思います。
あとパウダースノーだと、ロングボードに乗っているフィーリングを味わえます。浮遊感ってよく言われますけど、テールのフィンに加重するようなピボットターンに近いです。
なるほど。サーフとスノーの共通点はあると。
どっちも元は水なんで、似ていますよね。あとスノーも、クラシックなターンとかあったりするんで似ている点があります。
あと、バックカントリーって、リフトを使わないで自力で登るじゃないですか。そうすると、サーフィンで言うアウターリーフまでバドルアウトする感覚です。
自然の地形を滑ることも、クロスオーバーするような、山も海も一緒なのかなって思います。特に日本って山と海がすごく近くて、山と海が近いからこそ、パウダーが綺麗に積もる機会も多い。だからサーフィンが好きな人だったら、スノーも絶対好きなはずです。今は夏で楽しいですが、冬も楽しいです。それも絶妙にこう、日本の暮らしっぽくていいのかな。これまで自分はスノーボードをしてこなかったので、サーファーだったら冬も海でしょみたいに思っていたんですけど、日本に最高の雪があって、世界中の人が雪や訪れているって聞くとなんか、もったいない気がしちゃいますよね。
今後のプランは?
また映像をやりたいなと思っています。カットバックの日本版みたいな企画で、海と山が舞台の内容を考えています。もちろんヘアカットも入って、海でサーファーが髪を切るのと、山でスノーボーダーの髪の毛を切って、日本の素晴らしさを伝えられるようなものを作りたいですね!
インタビュー/川添 澪(かわぞえみお)●神奈川県鎌倉市出身・在住。カリフォルニア州立大学サンディエゴ校・サーフィン部卒。日本の1stジェネレーションのサーファーを父に持ち、幼い頃より海外のカルチャーに邂逅。90年初頭から10年間に渡り、カリフォルニア・サンディエゴ〜マリブに住み、ロングボード・リバイバルを体感。帰国後はON THE BOARD編集長に就任し、GLIDE他の雑誌媒体を手がける。これまで独自のネットワークでリアルなカリフォルニアのログ、オルタナティブサーフシーンを日本に紹介。